スタートボタンを、また君と。
第7章:創る
これ、ゲームにできないか?
その一瞬で、空気が変わった。
さっきまであった金の不安、将来の不安、疲れ――全部が、一旦、消えた。
カードを並べる。意味を見る。組み合わせる。ルールになる。
いける。
そう思った。
タロットは、占いとして扱うと人に寄りすぎる。でも、構造として見ると違う。カード。意味。関係性。システムになる。
その視点に切り替わった瞬間、全部が素材に見えた。並べ方。役。効果。ゲームとして、成立する。
気づいたら、考えていた。止まらない。夜になっても、止まらない。
でも、あの眠れなかった夜とは違う。ぐるぐるじゃない。前に進んでいる。集中している。
思いつく。組み立てる。壊す。また組む。
楽しい。
久しぶりだった――何かに完全にハマる感覚。時間が飛ぶ。何時間でも続けられる。あの、何もできなかった自分が、嘘みたいだった。
タロットクエスト。
名前が、しっくりきた。ただの占いじゃない。遊べる占い。いや、占いの形をしたゲーム。どっちでもよかった。とにかく、作りたかった。
その中で、ひとつの存在が生まれた。
リディア。
最初のキャラクター。緑の髪。ローブ。幼いようで、どこか全部わかっている目。静かで、でも――ちゃんと見ている。
こいつ、いいな。
そう思った。ただの機能じゃない。存在になった。話す。反応する。変わっていく。生きている感じがした。
これ、ただのアプリじゃないな。
1アプリ、1キャラ。その考えが、自然に出てきた。アプリを作るじゃない。存在を作る。その感覚だった。
気づけば、止まらなくなっていた。
金の不安は、消えていない。将来も、見えていない。でも――関係なかった。今は、これを作る。それだけだった。
そしてふと、思った。
ああ、動いてるな。
止まっていたはずの人生が、ちゃんと、動いている。
それが、何よりも大きかった。
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